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松山地方裁判所 昭和25年(ヨ)43号 判決

申請人(債権者) 山本義雄

被申請人(債務者) 上岡稔 外三名

一、主  文

本案裁判確定に至るまで被申請人等が昭和二十五年三月二十六日爲した

一、松山女学院の名称を田中千代チヱーン玉川服装学園と改称すること

二、役員の任期に関する規定中改正の件(定款第二十四條に左の但書を附加する件但し任期前と雖も定款第十六條によつて解任することができる)

三、理事長山本義雄を解任するの件

四、出資者山本義雄を除名するの件

に関する決議の執行を停止する。

訴訟費用は被申請人等の負担とする。

二、事  実

申請代理人は主文第一項同旨の判決を求めその理由として

(一)  松山女学院の出資者上岡稔並同女学院の組合員と自称する被申請人百田ツナエ、田中モモヱ、大橋モトの四名は昭和二十五年三月二十六日同女学院理事長たる申請人の承認を得ることなく松山女学院理事室に擅に集合し

一、松山女学院の名称を田中千代チヱーン玉川服装学園と改称すること

二、役員の任期に関する規定中改正の件(定款第二十四條に左の但書を附加する件 但し任期前と雖も定款第十六條によつて解任することが出來る)

三、理事長山本義雄を解任する件

四、出資者山本義雄を除名するの件

に関する決議をした。

(二)  然しながら

(イ)  被申請人等の右出資者総会と称するものは理事長である申請人に何等相談する事なく事実上被申請人等が集合したのであつて総会招集の手続に違反したものであり

(ロ)  上岡を除く其の余の被申請人等は大橋モトの金五万円の出資の外は何等現実に資金を出資していないのであつたが昭和二十五年一月十五日僅かに椅子等の現物出資を引取り松山女学院から分離し脱退したのである。

(ハ)  加之申請人は組合契約によつて就任した理事長でありその任期は三年と定められているのであり昭和二十四年九月五日開校以來今日まで無月給で毎日出勤して理事長としての職責を盡して來たものであつて、解任せられる「正当の事由」はないのである。又出資者としての組合員の除名についても何等の「正当な事由」の存在しないものである。

(三)  仍て被申請人等の該決議は右のような瑕疵があり、無効であるので目下当裁判所に決議無効確認訴訟提起中であるが被申請人等は右決議を盾に申請人の地位を否認するの行動に出ているのである。現在松山女学院はドレメ式関係の教師六名、生徒は百三十一名であつて右決議が執行せられ申請人の地位が奪われるような事態発生の場合は校舎なき生徒と教師は果して何処へ行くのか社会的にも甚だ重大な結果となるのであつて、本案裁判に於いて申請人が勝訴の裁判を受くるに於いても最早回復することの出來ない損害を受けることとなるので相当の保証を立てることを條件として右決議の執行を停止する旨の裁判を求めると陳述し、被申請人の答弁中申請人主張に反する部分を否認すると述べた。<立証省略>

被申請代理人は本件申請は却下する申請費用は申請人の負担とするとの判決を求め答弁として、

(一)  昭和二十五年三月二十六日被申請人等に於いて申請人主張に係る決議をしたことは認める。

(二)  申請人の其の他の主張事実については

一、申請人は右決議は「理事長である申請人に何等相談することなく事実上被申請人等が集合したものであつて総会招集の手続に違反するものであり」と言うが本件組合(松山女学院)の組合員は何れも理事であつて殊に被申請人上岡は理事兼事務長である。同人に於いてその職務権限に基いて組合総会の招集手続をする事は毫も違法でない。

尚決議事項中「解任並除名」の部分は組合の業務執行なる事実とは無関係の事項である。而して斯る事項の決議に付ては定款に何等規定する所は無いのであるから、他の組合員の一致と正当なる理由ありさえすれば、何時にても決議を爲し得るのであつて招集手続を言爲する余地はない。

二、申請人は「上岡を除くその余の被申請人等は云々昭和二十五年一月二十五日云々松山女学院から分離し脱退したのである」と主張しているが斯る事実は全然あり得ない(当裁判所昭和二十五年(モ)第三三号事件参照)

三、申請人は「組合契約に依つて就任した理事長でありその任期は三年であり云々」と主張しているが、申請人が組合契約によつて理事長となつたとの事実は否認する。仮りに組合契約によつて就任したものであつても、又仮令任期が三年であつたとしても(イ)理事長を解任する正当な事由があり(ロ)又組合員たることを除名するに足る正当な事由があれば他の全組合員の一致を以て何時にても除名し得ることは云うまでもない処である。

尚解任除名に関する事由に就ては要論すれば申請人が理事長たることは学校経営をやがて不可能ならしめるに至る虞が十分であり

尚申請人は共同事業を行う組合員の一員でありながら組合事業(学校経営)を独占しようとする意図を以つて行動している。斯る目的の下に行動することは著しく組合員としての適格を欠くと謂うのである。(当裁判所昭和二十五年(ヨ)第三九号事件並(ヨ)第一一六号(モ)第三三号事件参照)

(三)  申請の理由第三項に付いて

申請人が理事長を解任せられても学校の教師並に生徒の前途に関し何等憂うるの必要はないのである。

松山女学院――改称田中千代チヱーン玉川服装学園――は申請人が経営者の地位を去ることが其の発達充実の第一歩なのであつて、被申請人等に於いて現在教師並生徒に対しては教育事業として立派に善処する用意を有つているのであつて、申請人の憂うるような事態を招來することはない。

(四)  結論

申請人が理事長であり又組合員であることは許されない。叙上の事由によつて解任又除名されたものである。斯る決議が嚴存するにも拘らず依然申請人が理事長として或は組合員として行動することは対外的関係に於いて或は対内関係に於いて実に複雜極まる法律関係を生ずるものであつて、被申請人等の蒙る不利益は推し測られないものがある。

以上の理由によつて申請は到底許容するの余地のないものと信ぜられるから申請却下の裁判を求めると述べた。<立証省略>

三、理  由

第一、(一) 昭和二十五年三月二十六日被申請人等四名に於いて申請人主張に係る

(一)  松山女学院の名称を田中千代チヱーン玉川服装学園と改称する、二、役員の任期に関する規定中改正の件(定款第二十四條に左の但書を附加する、但し任期前と雖も定款第十六條によつて解任することができる)三、理事長山本義雄を解任する件、四、出資者山本義雄を除名するの件を決議したことは当事者間に爭のないところ、該決議の効力につき爭あり殊に申請人に於いては右決議第三項については申請人たる理事長山本義雄の解任並同人の組合員よりの除名については共に「正当の事由」がないと主張し、被申請人は申請人が理事長たることは学校経営をやがて不可能ならしめるに至る虞が十分であり尚申請人は共同事業を行う一員でありながら組合事業たる学校経営を独占しようとする意図を以て行動しているのでそれは著しく組合員としての適格を欠くが故に解任並除名につき共に正当の事由があると抗爭するのでこの点につき判断することとする。

(1)  先ず松山女学院の性格、構成並組合員の権限、理事長の権限等の点につき考究するに、松山女学院は民法上の組合として洋裁学校経営の目的を以て設立せられたものにして、その当時より少くとも右決議当時まで引続き申請人及被申請人上岡稔はその組合員であると同時に申請人は理事長、上岡稔は事務長の役職にあつたことは当事者間に爭のないところである。

成立に爭のない甲第一号証の一、二、第十七、第十八号証、乙第一号証、同第十二号(乙号各証は共に訂正部分を除く)、同第二、三号証、同第二十三号証(但しその一部)を綜合すれば松山女学院は昭和二十四年六月頃申請人の経営する旧松山洋裁女学院と被申請人百田ツナヱ、田中モモヱ等の経営せる旧玉川学園とが合併し、旧玉川学園跡敷地上に新に学校を建設して洋裁学校を経営することを目的として設立することになつたのであるが、新に資金を増加する必要があつたので新に被申請人上岡稔、亀岡清春の参加を求めたが結局同年七月十七日乙第一号証(訂正部分を除く)の如き組合規約(定款)を成作して、茲に松山女学院の設立を見たのであるが、当時の組合員並その出資額は申請人は三十五万円(現金出資十六万一千円余、現物出資十三万八千円余、権利金出資五万円、申請人の権利金を十五万円と評價してその一部を同人保有としたものである)、被申請人上岡稔及亀岡清春は各三十五万円(現金出資三十万円、権利金五万円、尤も右権利金は申請人より讓渡したもの但し亀岡はその後脱退した)被申請人百田ツナヱ、田中モモヱ、大橋モト及訴外重松ミサヲは各金六万二千五百円(全額権利金出資にして、旧玉川学園の権利金を二十五万円と評價してそれを四名に平等分割したもの)である。

尤もその後同年八月十五日更に増資の必要があつたので申請人と大橋モトに於いて各金五万円宛出資したものであること、而して各出資者(組合員)は理事として、出資者総会を構成し組合の業務に関し出資金百円につき一個の決議権を保有し、該決議権の過半数を以て決議をするものであること、理事長は右決議に基いて組合の業務を執行するにつき組合員の委任による代表権を有するものにして組合事業たる学校経営及校務一切を統轄し之を掌理するものとし、事務長は会計経理に関する一切の事務を掌理すると共に人事、公印の保管文書の收発及保存、其の他他役職員の主管に属しない事項を掌理すると共に理事長を補佐するものであること、を認めることができる。乙第一、二、三、十二号証は右認定の妨とはならず乙第二十三号証中右認定に牴触する部分は措信し難い。他に被申請人の提出する疎明方法を以ては右認定を動かすに足りない。

仍て本件松山女学院は民法上の組合にして、申請人は当初の組合契約によつて、理事長に選任せられたものであるが、当初の組合規約(乙第一号中訂正部分を除く)に依ればその任期は三年(乙第一号学院定款第二十四條本文)とされている外組合員の除名については何等約定するところがないから、組合の除名については民法第六百八十條に準拠して正当の事由ある場合に限り他の組合員の一致を以て之を爲すことが出來るものと謂うべく、又組合契約を以て業務の執行を委任せられた本件理事長の解任については右規約(乙第一号第二十四條本文)によつて、三年の任期終了するか(この場合は当然に資格を喪失する)或は民法第六百七十二條に準拠して他の組合員の一致を以て而も正当の事由がなければ解任することは出來ないものと謂うべきである。

(2)  次いで松山女学院の経営方針の点について考察するに

(イ) 弁論の全趣旨によつてその成立を推認することの出來る甲第六号証と成立に爭のない甲第七、八、第十七、第十八号各証乙第二十二号証を綜合すれば申請人経営の旧松山洋裁女学院と被申請人百田、田中等経営の旧玉川学園との合併の交渉は昭和二十四年六月上旬頃より開始せられたのであるが当時松山洋裁女学院は昭和二十一年七月に開校して以來ドレスメーカー式教授法を採用し、生徒数は百八十名乃至二百名位、分教室の生徒二百五十名位、卒業生は当時分教室を合せて千名近くであつて玉川学園の方は昭和二十三年五月に開校して以來、文化式教授法を採用し生徒数百三、四十名(卒業生はなし)であつた。

而して、右両者が合併して旧玉川学園跡敷地に新に建物を建設するため出資者を募り茲に新に被申請人上岡訴外亀岡清春等の参加を求めることになつたのであるが、その当時の話合では田中千代式教授法を採用して新発足する方針で申請人等に於いて田中千代の一應の諒解を得て田中式採用に決定し前叙の如く同年七月十七日組合規約(定款)作成を了えて開校準備を進めていたところ、同年八月二十一日頃田中千代よりその諒解を受けずして「田中千代先生御指導」「松山田中千代洋裁学院」の名称を用いて宣傳募集したことにつき抗議を受けたので、当時全組合員(被申請人等を含む)の同意を得て田中式採用を抛棄してドレメ式を採用するに変更し、当時その方針を確定して更めて生徒の募集をして、同年九月初に開校したものであること、其の後組合員生徒中から田中式採用の申出があつた爲めに同年十月中旬出資者総会を開いた結果、申請人と被申請人上岡の多数決議権によつて田中式を採用しない決議がなされたこと、その後本件決議あるに至るまでの間に於いて田中式に変更する決議はなされなかつたこと、尤も被申請人大橋モトとの個別の契約を以て松山女学院の第五教室を賃貸して同所で大橋が田中式教授を採用して教授したことはあるがそれは松山女学院の経営とは全々関係のないものであること、を認めることができ、乙第五、第二十二号証を以ては未だ松山女学院が田中式を採用することに決まつたことを認めることは出來ず乙第八同第二十三号証中右認定に牴触する部分は措信し難く他に右認定を動かすに足る資料はない。

(ロ) 右田中式採用は理事長たる申請人の專権によるものであるか否、弁論の全趣旨によつてその成立を認められる乙第十四号証、成立に爭のない乙第二十三号証によれば旧玉川学園関係の職員生徒、卒業生等より田中式採用の要望のあつたことは窺知ることができるところであるが、右認定の如く開校当初より組合員全員の一致によつてドレメ式を採用する方針が確立され、本件決議に至るまで未だ一度も田中式に変更する決議はなされなかつたものであつて、右は理事長一人の專権によつて左右され得る事項でないことは本件組合の組織、理事の権限等に照して明かである。被申請人等は乙第十六号証によるも田中式を採用することは自由であること明かであつて右は申請人独自の都合と意思に基いて故意に田中式を採用しなかつたものであると主張するけれども前示甲第十八号証によれば單に方式を採用するのみに非ずして、田中千代との連絡のある田中式を採用するためには田中千代本人との諒解を要するものであるのみならず文化式又はドレメ式から田中式に変更するには從來の教師、卒業生等との関係に於いても相当な犠牲を拂い困難な事業にあること、從つて度々その方針を変更することは松山女学院の経営上その策でなかつたものであつて、申請人の恣意に基いてドレメ式を採用して之を強いて変更しなかつたものではない事を推認することができる。乙第二十三号証中之に牴触する部分は採用し難く他に被申請人等の疎明の程度を以てしては未だ之を動かすには足りない。

(3)  開校以來本件議決当時までの間に於ける松山女学院の組合員、教師、生徒の動向並経営状態の変動について

(イ) 昭和二十四年七月十七日当初の組合規約(定款)の成立当時の組合員並にその出資額及生徒数については前記(1) 認定の通りである。

而して成立に爭ない甲第十七、十八号証と同上乙第二十三号証の一部によれば開校当時の新入生は四十八、九名で在校生は合計二百名位、分教室の分が二百五十名位であつたこと、其の後昭和二十五年一月に至り田中式を採用するために被申請人田中、百田、大橋、次いで上岡等旧玉川学園関係者は事実上道後ホテルに轉出して洋裁教授を始め、從つて旧玉川関係の教師、生徒が之に追随したこと、昭和二十五年度の新入生の募集も昨年の三分の一に減少したこと、尤も在校生は当初の半数に減少したこと、從つてその経営状態は経理とも次第に不振になつて來たことを認めることができる。

(ロ) 然し乍ら右認定の如き現象が申請人の理事長としての経営が不適切な爲めに惹起されたものか否かの点については甚だ困難な問題があつて、例えば被申請人等が道後ホテルに轉出した点の如きも叙上認定の如く田中式かドレメ式かについて組合員間に於いてとかく意向を異にしていたために、被申請人等に於いて之を実行に移すために爲されたものであつて、それ以上に之が何れの側の責因に依るものであるかは速断を許さないものと謂うの外なく叙上の事情が申請人の理事長としての経営の不適切な爲に誘致されたものとするには被申請人の疎明方法を以てしては未だ十分ではない。

尤も乙第八号証、同第二十三号証、甲第五号証の一、二、甲第十四号証中此の点に関する被申請人等の主張に添うが如き部分はたやすく措信し難いところである。

(4)  次に申請人は組合事業たる本件松山女学院の経営を独占しようとする意図を以て行動する等組合員としての適格を欠くか否や

(イ) 前記認定の通り田中式を採用せずして、ドレメ式を採用するに至つた事情並其の後の推移については之は必ずしも申請人の恣意に基くものとは認め難い。

(ロ) 成立に爭のない乙第十八、第二十三号証によれば申請人は本件組合の共有財産たる松山市玉川町二丁目所在の松山女学院の建物全部を申請人の個人所有名義に登記を終了したことを認めることができるけれども成立に爭のない甲第二十三号証によればその経緯については右建物を担保にして金借するときに当時組合に対し申請人の個人財産金十九万円余の立替をしていたのと、手続が煩雜であつたために申請人個人名義に保存登記を終了した上之を担保にして金を借りたものであるが右につき出資者の了解を得ているものなることを認めることができる。

又成立に爭のない乙第十五号証、同第二十三号によれば賞状に松山女学院長山本義雄と印刷して準備していたことを認めることができるけれども未だこの一事を以てしては申請人が組合事業を独占する意図のもとになされたか否は明かとは謂えない。又乙第八号証、同第十四号証、甲第五号証の一、二、甲第十四号証、其の他被申請人等の提出援用する疎明方法を以てしては被申請人等主張の如く申請人が本件学院の経営を独占せようとする意図を以て行動する等其の他組合員としての適格を欠くものとは認め難いところである。尤も乙第二十三号証中被申請人の主張に添うが如き部分はにわかに採用し難い。

叙上の事情を考合すれば申請人を理事長の役職から解任し且組合員から除名するについては民法組合の規定に所謂「正当の事由」が認められないから本件決議事項中少くとも除名に関する部分は爾余の判断をまつまでもなく遂に有効なものとは認め難い。

(二)  次いで「役員の任期に関する規定改正の件」と「松山女学院の名称を田中千代チヱーン玉川服装学園と改称する件」について考察するに前示乙第一号によれば前者は前示組合規約(学院定款)第一條に関するもの、後者は同上第二十四條但書(即ち但し任期前と雖も定款第十六條によつて解任することができる。而して第十六條によれば出資者総会の決議は出資者の決議権の過半数を以て之を爲すとある)に関するものであつて何れも組合契約の一部変更であるから右規約其の他に特定の定なき以上業務の執行等に関する通常の決議とは異り組合員全員の合意を以てするのでなければ有効に之を爲すことは出來ないものと謂うべきである。然るに右乙第一号証によるも定款の変更、修正、改廃は出資者総会に依つて定む(第三十條)とあるのみであつて通常の決議方法(第十六條所定の決議権の過半数によるもの)によつて爲し得る旨の記載は認められず其の他被申請人等の疎明方法を以てしては右規約(定款)を変更するにつき特別の方法によることを得る旨の定のなされた事を窺うことができないのみならず、前叙の如く申請人たる組合員山本義雄の除名決議にして有効とは認め難いところより申請人は依然として引続き本件組合員の地位を保有しているものと謂うべきであるに拘らず前示除名決議と同時になされた右二個の決議については被申請人等提出の乙第七号証(本件決議に関する出資者総会議事録)その他によるも組合員たる山本義雄が之に同意したことを認めることは出來ないから本件決議中右二点に関する部分は爾余の判断をまつまでもなく、この点に於いて既に有効とは謂い難い。

(三)  次いで本件決議中「理事長山本義雄を解任する件」については右の如く「役員の任期改正の件」の決議にして有効とは認められない以上、当初の組合契約による三年の任期中は正当の事由ある場合にして而も他の組合員全員の一致を以てでなければ解任されないものと謂うべく前叙認定の如く申請人は昭和二十四年七月十七日当時理事長に選任せられたものであるから該決議当時は勿論現に任期中であり、而も前叙((一)参照)の如く解任するにつき「正当の事由」が認められないからこの点に関する右決議も亦爾余の判断をまつまでもなく到底有効であるとは謂い難い。

第二、次に保全の必要性について判断する。

本件議決事項を執行するときは前叙第一(1) 認定の如き申請人の地位等の喪失等を來すは勿論松山女学院の経営方針は原則として從來採用中のドレメ式教授方法より田中千代式教授方法に轉換する結果となり、引いては現に松山女学院にはドレメ式関係の教師六名、生徒百三十一名を保有することは被申請人等の明かに爭わないところであるから之等の者も亦申請人同様回復することの出來ない損害を蒙る虞のあること明かである。尤も被申請人等はこの点については教育者として善処する用意があると抗爭するけれども採用し難いところである。從つて本案判決の確定に至るまで本件決議の執行を停止する必要性があるものと謂わねばならない。

仍て申請人の本件申立を全部正当として之を認容すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十五條第八十九條を適用して主文のように判決する。

(裁判官 橘盛行)

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